高等学校学習指導要領と商業教育の位置づけ
「教育基本法」、「学校教育法」を受け、初めて示された高等学校学習指導要領では、その一般原理において「社会的公民的的資質を向上させる」、「職業的な能力を向上させる」、「個人的な能力と特別な興味を最大限に発達させる」という三つの目標を掲げている。その一つひとつは現代においても高等学校教育における商業教育の必要性を如実に物語っている。
(1)社会生活と商業教育の必要性
高等学校教育の目標の第一に、「社会的公民的的資質を向上させる」ことが挙げられている。商業教育の目標は次のようにこの目標と合致している。
① 私たちは、一人ひとりが経済社会の構成員として、よりよい経済社会を築く役割を担っており、教育は経済社会の発展に応じた豊かな社会生活を送るために役立つものでなければならない。そのことが実現されることにより、国民の社会的公民的な資質が向上するのである。商業教育には、賢い消費者としての知識、家庭経営に必要な家計管理の知識、生活に安全な商品知識や流通機構に関する知識、貯蓄・投資に関する金融関連知識など、日常生活に役立つ知識・技術に関する教育内容が多く含まれている。
② 社会的公民的資質を向上させるねらいの一つとして、「新制高等学校の生徒は、地域社会の生活の活動的な一員でなければならない」とされている。これは、現在求められている高等学校と地域社会、地域産業界との密接な連携を図ることの大切さに合致するものである。高等学校における教育の成果が地域社会、地域産業界の活性化や発展によりよい貢献を果たすよう期待されている。インターンシップを通じて地域の企業の実績や地域社会への貢献について知ること、自己の職業生活を通じて地域経済社会の一員として地域経済社会の発展に貢献していることへの認識と誇りを持つことなども商業教育の内容に取り入れられている。
③ 国内経済や国際経済の状況を把握し、国内あるいは世界でどのようなことが問題となっているのかについて知ることは「地球市民」といわれる今日では、必要なことである。学習指導要領における「ビジネス基礎」をはじめ、商品の流通や消費に関わる学習、情報処理や簿記会計の学習、経済や経営の基礎学習など、商業教育は現実の産業社会の実態や動向に適切に対応する観点から、社会的公民的な資質を向上させるに相応しい教育の一つといえる。したがって、商業教育を通して地域社会、地域産業界に貢献するという目標を掲げることが大切である。
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