10/03/2009

シューマッハーの「よい仕事」の条件

シューマッハーは、「よい仕事」に、意味のある仕事、意義のある仕事、カネもうけや出世、名誉や権力のための仕事ではなく、人間として行うに値する仕事という定義を与えている。さらに具体的には、「よい仕事」は3つの目的・機能をもつことが必要である。

  1. それなりの生活をするのに必要かつ有用な財とサービスが得られなければならない。(生活の必要)
  2. よき執事のように、各人が自分の能力を開発し活用して自己を完成させなければならない。(自己の完成)
  3. 他人のために、他人と協力しながら行動して、生来われわれの内部にある自己中心主義から、みずからを解放することができなければならない。(他者とのつながり)

この定義に従えば、ある程度の収入が得られ、自らの能力を発揮し、他人と一緒に働けば、よい仕事に就いているといえるようである。たしかに、われわれは働くために生きるのではなく、生きていくために働くのだから、ある程度の収入が得られ、自分の好きなことをして生きられれば、それに越したことはないであろう。
今日、「よい仕事」は単純に金銭的な給付の多少に依存するとは限らない。やりがいや自由度といった非金銭的な給付が仕事の質を決めるうえで大事な要素となっている。
(古郡鞆子「雇用の創出と雇用の質的変化」p.35-36,財団法人統計研究会『労年市場の明と暗』,Occasional Papers,No.28,2000年3月)(参考:杉村芳美『「よい仕事」の思想』中公新書)

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