8/06/2025

埼玉新聞・コラム経世済民『望まれる段階的「情報教育」』

Blogの記事を8年半もサボっていたらしい。サボっていたこの8年半で色々な変化があった。千葉県民から神川県民となり、専門学校の専任教員になり、退職して大学の専任教員になった。

2025年6月3日の埼玉新聞・コラム経世済民に記事を執筆した。経世済民への執筆はこれで二度目だ。

ひょんなことから2024年度より他大学の非常勤講師として高校「情報科」の教科教育法(教職科目)を担当することになった。2007年から大学で情報基礎科目の授業を担当している訳だが、2003年度より設置されている高校の「情報科」がどんなカリキュラムになっているのか、あまり考えてこなかったが、教職を担当することになり、急ぎ学習指導要領や教科書に目を通した。そして、たまたま2025年度大学入学共通テスト(2025年1月実施)から共通教科「情報」の必修科目である「情報Ⅰ」が導入されることになり、その問題にも目を通した。また、本務校では文部科学省が進める数理・データサイエンス・AI教育を取り入れる形で、この2025年4月より全学部2年次必修科目として「データリテラシー演習」を開講した。

大学において、①情報基礎科目を担当してきたこと、②高校「情報」の教職科目を担当することになったこと、③数理・データサイエンス・AI教育に携わることになったことが、今回のこのコラム記事を書くきっかけとなった。全文をそのまま載せることにする。

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望まれる段階的「情報教育」
 皆さんは高等学校にも大学にも「情報教育」があることをご存じだろうか。区別をするなら、高等学校における情報教育を「情報科教育」といい、大学においては初年次におこなう情報教育を「情報基礎教育」と指すことが多い。
 2003年度、高等学校に教科「情報」が新設・導入され、高校生全員が学ぶ普通教科「情報」(現・共通教科「情報」)と主として専門学科の高校生が学ぶ専門教科「情報」が開設された。これが現行の「情報科教育」の始まりである。実際のところは専門学科の高校生たちは代替科目を受けていることがほとんどなので、『普通高校(普通科)の高校生が学ぶ』という方が理解としては正しい。二度の学習指導要領改訂を経て、2022年度から共通教科「情報」には、1年次必修科目「情報Ⅰ」と選択科目「情報Ⅱ」が設置されている。導入当初(2003年度)から高校1年生のうち、普通科在籍者は全体の約7割を占めていたが、この割合は現在までほぼ変わらない。2006年度以降に入学した大学生の多くは「情報Ⅰ」の授業を受けていることになる。
 また、近年では文部科学省が「高大接続改革」(高校教育、大学教育、大学入学者選抜を一体的に改革する取り組み)を推進しており、「情報Ⅰ」を学んだ最初の高校生たちが大学受験を迎えた今年1月、ついに大学入学共通テストに「情報Ⅰ」の試験が導入・実施に至っている。試験問題もプログラミング、データ分析等の基礎的な知識やスキルだけでなく、現代社会を生きていく上で必要とされる思考力や読解力が試される内容となった。
 「情報科教育」は知識・思考・読解ベース(座学ベース)が多く、パソコン操作が伴う実技はほぼ扱わない構成となっており、「高大接続改革」もそれに紐付く形となっている。その煽りを受けているのが大学における「情報基礎教育」である。「情報基礎教育」は、未だにパソコン自体の使い方、タッチタイピング、ビジネスメール、Office系ソフトの使い方、ビジネス文書、データ分析の基礎、プレゼンテーションなどを授業内容として指導している大学が多い。「未だに大学でそんなことをやっているの?」と思うかもしれないが、レポート作成や論文執筆、就職活動などに必要不可欠であり、大学入学前に全く触れていないからこそやらなければならない。そのため基礎的内容を発展させることも難しいのが現状である。
 スマホやタブレットが当たり前にある環境への慣れによるキーボード嫌い・PC嫌いが増える中で、①「情報科教育」(共通教科「情報」)がPCを使った実技をメインとしていない、②多少授業でPCに触れていたとしても、高校1年次に受けていることが多く、大学入学時点で既に忘れている、③キーボード操作も習っていない場合が多い…などの「PCの無知識・無スキル」状態を打破する必要がある。これを打破するためには、知識とスキルの両方を並行して学ぶ『段階的「情報教育」』の整備が急務ではないだろうか。
(ここまで)

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